費用・見積執筆:林部(株式会社リベライズ 代表)

システム開発の費用相場|種類別・規模別の目安

システム開発の費用相場を、Webシステム・業務システム・基幹システム・アプリの種類別、規模別に解説。費用の決まり方、見積が会社ごとに違う理由、初期費用以外のコストも紹介します。

システム開発の費用相場を調べると、金額の幅が大きすぎて、自社の案件がどこに当てはまるのか分からないという声をよく聞きます。この記事では、システム開発の費用の目安を規模と段階で整理し、Webシステム・業務システム・基幹システム・アプリの違い、費用の決まり方、見積が会社ごとに倍違う理由、初期費用以外にかかる費用までを解説します。

システム開発の費用相場は「規模」と「段階」で見ます

費用の幅が大きいのは、同じ「システム開発」という言葉に、試作から全社の基幹システムまでが含まれるからです。まずは段階ごとに、費用の大きさがどう変わるかを示します。

段階内容費用の大きさ
モック画面イメージを作り、使い方を確かめる最も小さい。数週間で作れることが多い
PoC(試作)主要な機能だけを小さく作り、効果を確かめるモックより大きいが、本開発の一部に収まる
中小規模のWebシステム・業務アプリ初回リリースに必要な機能をそろえる機能の数と外部連携の有無で大きく変わる
本格展開(スケール)利用者や拠点を広げ、外部連携も加える最も大きい。運用・保守費も比例して増える

同じ案件でも、どの段階まで作るかで費用は桁が変わります。また、外部サービスの利用料、決済手数料、ドメインや端末の費用は開発費とは別にかかります。AIなどの最新の技術を使うか、従来型の方法で一から作るかでも変わります。自社の案件がどの段階にあたるかを先に決めると、見積の比較がしやすくなります。

Webシステム・業務システム・基幹システム・アプリの違い

種類別の費用相場を示す公的な統計は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。そこで、種類ごとに「費用が膨らむ要因」で比べます。

種類主な例費用が膨らむ要因
Webシステム予約サイト、会員サイト、問い合わせ管理会員機能、決済、検索エンジン対策、デザインの作り込み
業務システム受発注管理、案件管理、社内申請業務ルールの複雑さ、帳票の数、権限の種類
基幹システム販売・在庫・会計など全社の中核業務利用部門の多さ、他システムとの連携、データ移行、止められないことへの備え
スマートフォンアプリ会員アプリ、店舗アプリiPhoneとAndroidの両対応、ストア申請、通知、端末ごとの確認

基幹システムは、規模が大きくなりやすい種類です。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の分析では、開発プロジェクトの工期・予算・品質は規模が大きくなるほど計画未達となるケースが多いと報告されています。大きな案件ほど、段階に分けて発注する意味があります。

スマートフォンアプリは、Webアプリやメッセージアプリ上のミニアプリで代替できる場合があります。ネイティブアプリ(ストアからインストールするアプリ)は初期費用も保守費も高くなりやすいため、利用者が繰り返し開く理由があるかを先に確かめてください。

費用は「機能の量 × 人月単価」で決まる

開発費の多くは人件費です。基本の考え方は次の式です。

開発費 = 作業量(人月)× 人月単価

人月は「1人が1ヶ月働く作業量」です。たとえば作業量が6人月で、単価が月800,000円なら、開発費は4,800,000円になります(数字は仮)。

作業量は、機能の数と複雑さで決まります。画面の数、業務ルールの例外、他システムとの連携、データ移行の有無が主な変数です。

人月単価は、担当者の役割や経験で変わります。参考までに、エン・ジャパンが運営する案件検索サービスの集計では、フリーランスエンジニア案件の月額平均単価は738,000円でした(2025年5月時点)。開発会社に依頼する場合は、ここに管理や品質確認の費用、会社の利益が加わります。単価の詳しい見方は人月単価の相場で解説しています。

同じ要件でも見積が倍違う理由

同じ資料を渡しても、各社の見積が2倍近く違うことは珍しくありません。主な理由は次のとおりです。

  1. 前提と範囲が違う: 要件定義を含むか、データ移行を含むか、テストをどこまで行うかが各社で違う
  2. リスクの見込み方が違う: 完成責任を負う請負契約では、仕様の不確かさに備えて上乗せ(バッファー)を積む
  3. 作り方が違う: 既製のサービスを組み合わせるか、一から作るか。AIコーディングを使うかどうか
  4. 体制が違う: 経験の多い担当者を厚く配置するか、若手中心か
  5. 除外項目が違う: 外部サービスの利用料、インフラ費、保守費を見積に含めるかどうか

安い見積が良いとは限りません。前提を削って安く見せている場合、契約後に追加費用が出ます。逆に、高い見積は不確かさへの備えが厚いだけかもしれません。比べるときは、金額より先に前提条件と除外項目を読み比べてください。見積書の読み方は見積書の見方にまとめています。

初期費用以外にかかる費用

システムは作って終わりではありません。稼働後も毎月、毎年の費用がかかります。

費用内容注意点
保守費不具合対応、問い合わせ対応、小さな修正対応範囲と時間を契約で確認する
インフラ費サーバー、データベース、ストレージ利用量に応じて増える従量課金が多い
ライセンス・利用料パッケージやSaaS、ノーコードツール利用人数や件数に比例して増える
外部APIの利用料地図、決済、AI、メッセージ送信など為替や提供元の値上げの影響を受ける
その他ドメイン、SSL証明書、決済手数料見積の除外項目に入りやすい

見積をとるときは、初期費用と月額費用を分けて出してもらいましょう。5年など一定の期間で合計すると、初期費用の安い方式が割高になる場合があります。

受託開発の現場から

受託開発の現場では、費用の説明で発注者が迷わないよう、段階と内訳を分けて示す工夫がされています。その考え方を紹介します。

段階ごとに価格帯を示し、投資を分けて踏む

予算が決まっていない場合は、モック、小規模なPoC、本格展開の価格帯を示してもらい、段階に分けて投資する進め方が有効です。最初の投資を小さくし、結果を見て次に進むかを決めます。

要件定義の深さで工数は約3倍変わる

要件定義を「完全対応版」で行うか「主要機能に絞ったミニマム版」で行うかで、約3倍の工数差が出るという例があります。最初にすべてを詰めようとすると、それだけで費用が膨らみます。

安すぎる見積には注意する

要件定義に十分な費用を割かず、極端に安い金額で設計まで引き受ける会社には注意が必要です。比較の結果、そうした危険なベンダーが残ってしまうおそれがあります。また、受託開発の現場では、完全な請負は不確かさへの上乗せで2〜3割割高になりやすいと言われます。

自社専用のAIを作るかどうかが分岐点

AIを使うサービスでは、汎用の生成AIを組み合わせるか、自社専用のAIを一から作るかで費用が大きく変わります。公開されている技術を超える分析を求めると見積が1桁変わることもあり、自社専用のAIは事業の段階によってはおすすめできません。

まとめ

  • 費用は規模と段階で見る。まず試作(モック・PoC)で確かめ、段階ごとに投資する
  • 開発費は「作業量(人月)× 人月単価」で決まり、作業量は機能の数と複雑さで変わる
  • 見積が倍違うのは、前提・リスクの見込み・作り方・体制・除外項目が違うため
  • 保守費、インフラ費、利用料など、初期費用以外の月額費用も必ず見込む

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