システムの保守運用費用の相場と保守契約で確認すべき項目
システムの保守運用費用の相場と、保守契約で確認すべき項目を解説。保守と運用の違い、5年総額で見たコスト、生成AIを組み込んだシステムで追加でかかる費用を紹介します。
システムは作って終わりではなく、使い続ける間ずっと保守運用費用がかかります。開発費だけで予算を組み、リリース後の費用を見込んでいなかったために、更新や改修ができなくなる例は少なくありません。この記事では、システムの保守費用の相場の考え方、保守と運用の違い、5年総額で見たコスト、保守契約で確認すべき項目、生成AIを組み込んだ場合に追加でかかる費用を説明します。
システムの保守費用の相場:年間で開発費の何%か
保守運用費用は、初期の開発費に対する年間の割合で語られることが多い費用です。ただし、その割合には公的な統計がありません。開発会社の解説記事でも、年5〜15%とするもの(ISSOH のコラム)、15〜20%前後とするもの(AI Revolution のコラム)があり、いずれも出典は示されていません。
そのため、割合はあくまで予算の当たりをつける目安として使い、実際の金額は保守の範囲から積み上げて確認するのが確実です。ここでは目安として、年間で開発費の10〜20%を置いて考えます。
割合が上下する主な要因は次のとおりです。
- 対応時間(平日日中のみか、夜間・休日も含むか)
- 障害時の復旧目標の厳しさ
- 個人情報や決済を扱うかどうか
- 外部サービスとの連携の数
- 月々の軽微な修正をどこまで含むか
保守と運用の違いと対応範囲の決め方
「保守運用」とまとめて呼ばれますが、保守と運用は中身が違います。
対応範囲は、次の順番で決めると整理しやすくなります。
- 自社でできることを決める: 問い合わせの一次受付やデータ登録を社内で行うなら、その分は保守契約から外せます。
- 止まったときの影響を考える: 1日止まると業務が回らないシステムなら、夜間・休日の対応や復旧目標が必要です。
- 含まないものを明確にする: 機能の追加や大きな改修は、保守の範囲外として別に見積もるのが一般的です。
5年総額で見ると初期費用の1.5〜2倍になる
保守費用は毎年かかるため、開発費だけを見て判断すると総額を見誤ります。年間で開発費の10〜20%の保守費がかかると仮定すると、5年間の保守費は開発費の50〜100%になり、総額は開発費の1.5〜2倍になります。
この表には、サーバーやクラウドの利用料、外部サービスの月額料金は含めていません。これらは保守費とは別にかかるため、見積では分けて確認してください。
開発会社を比べるときも、初期費用だけでなく5年総額で比べると判断を誤りにくくなります。初期費用が安くても保守費が高ければ、総額は逆転することがあります(システム開発の費用相場)。
保守契約で確認すべき項目
保守契約を結ぶ前に、次の項目が書かれているかを確認してください。
保守契約の内容は、一度決めたら終わりではありません。利用者が少ない立ち上げ期は軽い内容で始め、利用が広がったら手厚くする、といった見直しができます。逆に、問い合わせや修正の依頼がほとんどない状態が続いているなら、範囲を絞って費用を下げる相談をしてもよいでしょう。月次報告で実際の作業量を確認しておくと、見直しの根拠になります。
最後の解約と引き継ぎは見落とされがちです。将来、開発会社を変えることになったときに困らないよう、契約の時点で確認しておきましょう(開発会社を乗り換えるときの引き継ぎ手順)。
生成AIを組み込んだ場合に追加でかかる費用
生成AIを組み込んだシステムでは、通常の保守費に加えて次の費用がかかります。
- AIの利用料: 外部のAIサービスは、処理した文字量(トークン)に応じた従量課金が一般的です。たとえば Anthropic の API の料金はすべて米ドル建てで、モデルごとに100万トークンあたりの単価が決まっています(Anthropic 料金ページ)。利用者が増えれば費用も増え、為替の影響も受けます。
- モデル更新への対応費用: AIのモデルは定期的に提供終了になります。Anthropic は一般公開したモデルの提供終了について少なくとも60日前に通知するとしており(Anthropic のモデル提供終了のページ)、OpenAI は一般提供モデルについて少なくとも6か月前に通知するとしています(OpenAI の提供終了のページ)。新しいモデルに切り替えるたびに、回答の品質の確認や指示文の調整、再テストの作業が発生します。
- 回答品質の確認: AIの回答が正しいか、意図しない回答をしていないかを定期的に確認する作業も必要です。
AIを使うシステムでは、これらを保守契約に含めるのか、別の費用とするのかを、見積の段階ではっきりさせておきましょう。
受託開発の現場から
ある受託開発会社の保守・運用費の示し方から、発注者が見積を比べるときに役立つものを紹介します。
- 月額を「インフラ実費」と「保守運用費」に分ける: 保守の内容は、監視と障害の一次対応、管理者からの問い合わせ対応、ライブラリとセキュリティの更新、月に決まった人日までの軽微な修正、月次報告と具体的に書きます。機能追加と上限を超えた分は別途です。
- 構成と保守の重さをそろえる: 最初は構成要素の少ない定額中心の小さな構成で公開し、保守も軽くします。利用者が増えたら、自動で拡張できる冗長な構成に移り、保守も手厚くします。発注者が自社で運用する場合は、月額固定ではなく、必要なときに時間単位で依頼するスポット保守を提案することもあります。
- AIの利用料は上振れに備える: 外部AIの利用料はドル建てで、値上げや為替変動のリスクがあることを発注者に説明しておきます。そのため、利用量で増える費用には上限額と自動停止の仕組みを設け、月額が想定を超えないようにしています。
- 費用を毎月見える化する: 社内でもインフラ費用を毎月レポートし、責任者の承認なしにSaaS(月額制のクラウドサービス)を追加しない運用にしています。
まとめ
- 保守費は年間で開発費の5〜20%程度と幅があり、公的な統計はありません。範囲から積み上げて確認します。
- 保守(直す・更新する)と運用(毎日動かす)を分け、自社で担う範囲を決めます。
- 年10〜20%なら、5年総額は開発費の1.5〜2倍になります。初期費用ではなく総額で比べます。
- 生成AIを組み込むと、ドル建ての利用料とモデル更新への対応費用が加わります。
保守まで含めた総額の見通しは、発注前に持っておくと予算の判断がしやすくなります。FastProposal の無料AI相談では、案件の内容を整理し、開発費の目安を数分で確認できます。