ウォーターフォールとアジャイルの違い|発注者はどちらを選ぶべきか
ウォーターフォールとアジャイルの違いを発注者の目線で解説。要件の固まり具合で選ぶ判断基準、アジャイルで発注者に求められる関わり方、開発手法と契約形態の関係を紹介します。
ウォーターフォールとアジャイルの違いは、「最初に全部を決めてから作るか」「作りながら決めていくか」にあります。初めてシステム開発を発注する方にとっては、どちらを選べばよいのか、発注者として何をすればよいのかが分かりにくいところです。この記事では、2つの開発手法の違いと選び方、アジャイルで発注者に求められる関わり方、契約形態との関係を発注者の目線で整理します。
ウォーターフォールとアジャイルの違い
ウォーターフォールは、要件定義、設計、開発、テスト、リリースの順に工程を進める手法です。前の工程で決めたことを次の工程の前提にするため、原則として後戻りしません。水が上から下へ流れるイメージから、この名前が付いています。
アジャイルは、機能を小さな単位に分け、1〜4週間程度の短い期間(スプリント)で「作る、見せる、直す」を繰り返す手法です。優先度の高い機能から作り、実際に触った結果を見て次に作るものを決めます。
どちらが優れているという話ではありません。案件の性質に合っているかどうかで選びます。
選ぶ基準は「要件がどこまで固まっているか」
判断の軸として最も使いやすいのは、要件の固まり具合です。
ウォーターフォールが向いているケース
- 現行業務の流れが決まっていて、作るべき機能を一覧にできる
- 法令や取引先の仕様など、外部の条件で中身がほぼ決まる
- 稟議の都合で、最初に総額と納期を確定させる必要がある
- 関係部門が多く、途中で何度も合意を取り直すのが難しい
アジャイルが向いているケース
- 新規事業で、ユーザーが本当に使うかどうかがまだ分からない
- 競合や市場の変化に合わせて、機能や収益モデルを変える可能性がある
- まず小さく出して反応を見て、投資を続けるか判断したい
迷ったときは、全体を一度に決めず、段階で分ける方法もあります。たとえば要件定義や画面モックの作成までを先に進め、要件が固まった部分はウォーターフォール、未確定の部分はアジャイルで進める組み合わせです。最初に小さく作って検証する考え方はMVP開発の進め方でも詳しく紹介しています。
アジャイルで発注者に求められる関わり方
アジャイルは「開発会社に任せておけば柔軟にやってくれる手法」ではありません。発注者の関与がウォーターフォールより増えます。
IPA(情報処理推進機構)の情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)では、発注者側がプロダクトオーナー(作るものの優先順位を決める責任者)を選任し、開発チームへの情報提供や意思決定、社内の関係者との調整を担う形を示しています。
具体的には、発注者側で次のことが必要になります。
- 機能の優先順位を決め、スプリントごとに見直す
- スプリントの終わりに動く画面を確認し、その場で判断する
- 開発チームからの質問に数日以内に答える
- 社内の関係部門や現場の意見を集めて一本化する
担当者が他の業務と兼務で、週に1時間も確保できない状況では、アジャイルは機能しにくくなります。発注前に「誰が、週に何時間関われるか」を社内で決めておくことをお勧めします。
ウォーターフォールなら関与は少なくてよいのか
ウォーターフォールでも、発注者の仕事がなくなるわけではありません。関与が要件定義と受入テストに集中するだけです。要件定義で決めたことが後工程すべての前提になるため、この段階で現場の業務を正確に伝えられないと、完成後に「使えない」という事態になります。
また、ウォーターフォールで途中の仕様変更が出ると、設計からやり直しになる範囲が広がり、追加費用や納期の延長につながります。「最初に決めきる自信がない」と感じるなら、その時点でアジャイルや段階的な発注を検討する価値があります。
どちらの手法でも、発注者が最後まで責任を持つのは「誰の、どんな業務を、どう良くするか」という目的の部分です。ここを開発会社に任せきりにしないことが、手法を問わず共通する成功の条件です。
開発手法と契約形態(請負・準委任)の関係
開発手法は契約形態の選び方にも関わります。請負は「仕事の完成」に対して報酬を払う契約、準委任は「業務の遂行」に対して報酬を払う契約です(民法第632条・第656条)。
IPAのモデル取引・契約書(第二版)は、要件定義を準委任、内部設計からシステム結合までを請負とする工程別の型を示しています。一方、アジャイル開発版は準委任契約を前提としています。作る物を事前に決めにくい進め方では、完成義務を負う請負がなじみにくいためです。
ただし、アジャイルでも準委任のままでは「何をもって終わりとするか」が曖昧になりがちです。スプリントごとの目標、成果物の確認方法、契約期間と上限額は契約前に決めておきましょう。契約形態の詳しい違いは請負契約と準委任契約の違いで解説しています。
受託開発の現場から
ある受託開発会社は、商談や提案の場で次のように説明しています。
- アジャイルは「ドキュメントを作らないこと」ではない。 アジャイルは仮説検証型の開発と捉えられます。ユーザーが何を受け入れるか分からないので、最低限の人員とドキュメントでまず作って早く当て、変更がある前提で予算を組んでおく、という考え方です。
- 「最初から決まっていれば、そもそも事業はうまくいっている」。 最初に作る部分だけなら請負でできるという見方があることにも触れたうえで、外部環境の変化で収益モデル(手数料型かサブスクか)が変わるような事業では、変更を吸収できる契約形態の方が向いている、という考え方です。
- 最後のスプリントを仕様変更の受け皿にする。 同社の提案書では、開発を複数のスプリントに分け、最後の1つを「仕様変更への対応」に充てる計画を示した例があります。着手金の支払いと開発金額の確定のタイミングもスケジュール上に明記しています。
- 稼働後も短い周期で回す。 本番稼働後は2週間のスプリントで新機能の開発を回し、スプリントごとにリリース内容を報告する運用をとっています。一方で、発注者が入出力の仕様を確定できる案件では、仕様確定後に範囲と正式見積を固める進め方も選んでいます。
まとめ
- ウォーターフォールは最初に全体を決めて順に進め、アジャイルは短い周期で作りながら決める
- 選ぶ基準は「要件がどこまで固まっているか」。迷ったら工程を分けて組み合わせる
- アジャイルでは発注者が優先順位を決め、継続的に判断する役割を担う
- 請負は完成義務があり、アジャイルは準委任を前提にすることが多い
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の契約や法的判断については弁護士などの専門家にご相談ください。
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