開発会社選び執筆:林部(株式会社リベライズ 代表)

相見積もりの取り方とマナー|依頼文と断り方の例文付き

システム開発の相見積もりの取り方とマナーを解説。依頼する社数、同じ条件で比較するための依頼のしかた、回答期限の伝え方、選ばなかった会社への断り方を例文付きで紹介します。

システム開発の相見積もりは、取り方を間違えると比較ができず、手間だけが増えます。この記事では、相見積もりの取り方とマナーを、初めて開発を外注する担当者向けに整理しました。依頼する社数、同じ条件で比べるための依頼のしかた、回答期限と相見積もりである旨の伝え方、選ばなかった会社への断り方を、例文付きで紹介します。

相見積もりは何社に依頼するのが適切か

相見積もりの依頼先は、3社前後が扱いやすい数です。

  • 1社だけ: 金額や提案内容が妥当かどうか、比べる基準がありません。
  • 2社: 差が出たとき、どちらが標準的なのか判断しにくくなります。
  • 3社前後: 金額と提案の違いが見え、比較の手間も現実的な範囲に収まります。
  • 5社以上: 説明会や質問対応、提案の読み込みに時間がかかり、比較の質が落ちやすくなります。

システム開発の見積は、各社がヒアリングと検討に時間をかけて作ります。発注する可能性がない会社にまで依頼するのは、相手の負担になるだけでなく、自社の比較作業も重くします。最初に候補を絞り込んでから依頼しましょう。候補の探し方は開発会社の探し方とマッチングサービスの比較で紹介しています。

同じ条件で比較するための依頼のしかた

相見積もりで最も多い失敗は、各社が別々の前提で見積を出し、比べられなくなることです。これを防ぐには、全社に同じ資料を渡します。

依頼書に入れる項目内容の例
背景と目的なぜ作るのか、何を良くしたいのか
利用者と規模誰が、何人くらい使うか
必須の機能と、あれば良い機能優先度を分けて書く
既存システムとの連携連携先と、データの受け渡し方法
希望の時期使い始めたい時期と、その理由
予算の考え方上限の目安、または段階的に投資したいか
見積に含めてほしい範囲保守・インフラ費用・データ移行を含むか
提出物と形式工程別の工数、役割別の単価、前提条件

項目が多くて書けない場合は、まず分かる範囲で書き、不明な点は「未定」と明記します。依頼書の書き方はRFP(提案依頼書)の書き方で詳しく説明しています。

各社から受けた質問への回答は、質問した会社だけでなく全社に共有します。情報に差があると、見積の前提がそろいません。

回答期限の設定と、相見積もりである旨の伝え方

回答期限は余裕を持って設定する

開発会社は、依頼書を読み、質問を整理し、工数を積み上げて見積を作ります。短すぎる期限では、余裕を見た大まかな金額しか出てきません。案件の規模にもよりますが、質問の受付期間を含めて2〜3週間程度は見ておくと、内容のある見積を受け取りやすくなります。

相見積もりであることは最初に伝える

相見積もりであることを隠す必要はありません。むしろ最初に伝える方が、各社も前提を理解して動けます。依頼文の例を紹介します。

件名:システム開発のお見積りご依頼(〇〇システム)

株式会社〇〇 〇〇様

このたびは、ご検討の機会をいただきありがとうございます。 添付の依頼書のとおり、〇〇システムの開発について、お見積りとご提案をお願いできますでしょうか。

本件は、複数社にお見積りをお願いしております。各社に同じ資料をお渡しし、同じ条件で比較させていただきます。

ご質問は〇月〇日までにメールでお寄せください。回答は、ご依頼先の全社に共有いたします。 お見積りとご提案は、〇月〇日までにお送りください。

選定の結果は〇月〇日ごろ、全社にご連絡いたします。

選定結果を連絡する時期まで書いておくと、各社が次の予定を立てやすくなります。

相見積もりのマナー

  • 他社の見積書や提案書を、別の会社に見せない
  • 他社の金額を引き合いに、根拠のない値下げを求めない
  • 見積の前提を後から変えるときは、全社に同時に伝える
  • 発注の可能性がほとんどない「金額の確認だけ」の依頼は避ける

金額を下げたいときは、値引きを求めるより、範囲を見直す相談をする方が建設的です。機能を段階に分けたり、優先度の低い機能を後回しにしたりすると、品質を保ったまま金額を調整できます。

見積が届いたら比較表にまとめる

見積と提案がそろったら、各社の内容を一つの表に並べます。合計金額だけでなく、次の項目を横並びにすると違いが見えます。

  • 作業範囲(含む機能と、含まない機能)
  • 工程別の工数と、役割別の単価
  • 初期費用と、公開後の月額費用
  • 体制(担当者、PMの有無)と着手可能な時期
  • 前提条件(発注者が準備するもの、見積が変わる条件)

範囲がそろっていない項目は、各社に確認して埋めます。金額に大きな差があるときは、ほとんどの場合、範囲か前提のどこかが違っています。見積書の読み方はシステム開発の見積書の見方、提案の採点方法は提案書の評価方法で詳しく説明しています。

選ばなかった会社への断りメール例文

選ばなかった会社にも、結果を必ず連絡します。時間をかけて提案してくれた相手への礼儀であり、将来また相談する可能性もあるからです。理由は詳しく書かなくてもかまいませんが、一言添えると相手の今後の改善に役立ちます。

件名:お見積りの選定結果のご連絡(〇〇システム)

株式会社〇〇 〇〇様

先日は〇〇システムについて、丁寧なご提案とお見積りをいただき、誠にありがとうございました。

社内で慎重に検討いたしました結果、今回は他社にお願いすることになりました。 ご提案の〇〇の点は大変参考になりましたが、今回は〇〇(例:予算と導入時期)を重視して判断いたしました。

ご期待に沿えず申し訳ございません。お時間を割いていただいたことに、改めて御礼申し上げます。 また機会がございましたら、ご相談させていただけますと幸いです。

連絡は、発注先との契約の見通しが立った時点で速やかに送ります。電話よりメールの方が、相手も記録を残せて確認しやすくなります。

受託開発の現場から

開発会社の立場から見た相見積もりの実情をもとに、比較に役立つ考え方を紹介します。

  • 金額はスコープをそろえて比べる: 他社より金額が高いと言われた場合でも、「範囲(スコープ)の調整で圧縮できる」ことはよくあります。金額の差は、作る範囲の差であることが多いからです。比べる前に、各社が何を含めているかをそろえてください。
  • 複数の選択肢で予算に合わせる: 最低限の範囲から本格的な作り直しまでの松竹梅の3案や、A案・B案を出して、発注者が予算に合わせて選べるようにする提案もあります。依頼時に「段階的な案も歓迎」と伝えると、比較の幅が広がります。
  • 事前調査を切り出して比較に使う: 構想策定や事前調査だけを先に小さく発注し、その成果物を発注者のものとして他社への提示や比較に使う進め方があります。各社が同じ前提で見積を出せるようになります。
  • 比較と稟議の期間を工程に入れる: 提案書のスケジュールに「比較・稟議・契約」の期間を発注者の工程として入れる例もあります。相見積もりにも時間がかかる前提で、全体の計画を立てましょう。

まとめ

  • 相見積もりは3社前後に絞って依頼すると、比較の質と手間のバランスが取れます。
  • 全社に同じ依頼書を渡し、質問への回答も全社に共有して前提をそろえます。
  • 回答期限には余裕を持たせ、相見積もりであることは最初に伝えます。
  • 選ばなかった会社にも、お礼と結果を速やかに連絡します。

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